キャッチボールができない会話はたとえ饒舌でもただのひとりごと

テレアポ(テレフォンアポインター)という仕事があります。商品やサービスについて電話で案内・紹介し、購入やサービス利用を促す業務です。

購入者やサービスへの加入者を獲得するために、商品の特性やサービスの内容を熟知していることはもちろんですが、成績のよいテレアポの人に共通するのは、聞き上手であるということです。

聞き上手?話し上手ではなくて?そのような疑問を持った方もすくなくないかもしれません。

商品やサービスを売り込むのに、ただ聞いてばかりでは話にならないのでは?
やはり、相手に有無を言わすことなく、立て板に水でスラスラと淀みなく商品やサービスの特性を紹介、案内することができて、相手を納得させ、購入かサービス利用につなげていくのがまっとうな道筋じゃないの?と。

「話し上手」と聞いてあなたが思い浮かべるのは、やはり、そのような人でしょうか?人を飽きさせない、途切れないマシンガントークで周囲の人々を圧倒させるような人。

しかし、そのような人がテレアポの仕事をしても、おそらく成績にはつながらないというのが実情なのです。

選挙のシーズンになると駅前などに立候補者が辻立ちし、演説をしている姿が良く見受けられます。立ち止まって聞いているのは、大方その人自身か、その人の属する政党の支持者です。

ごく稀に声のトーンや内容に、興味を持ち、立ち止まる人もいますが、たいていは声を枯らせて喋りつづけたところで、本人か、本人の属する政党になんのシンパシーも感じない人には素通りされてしまうのが関の山。

大がかりなショーとして「一方通行の喋り」、すなわち対観客にトークライブを成立させるような人も同様に、まず、その大多数の観客が「話し手」のファンであることが大前提です。

その人の話術が本当に素晴らしかったとしても、マイクを通し、大勢のその人をまったく知らぬ聴衆の前で、ほとんどの人には、今どんな人がマイクを握って話しているのか、その姿を確認することもないまま、話すとしたら、その魅力はおそらく半減。あるいはそれ以下も伝わらないかも知れません。

もし、もっと規模を狭め、相手がせめて話し手の顔を確認できるくらいの近距離で、一対一で話しているときのように声を出して相づちを打ったり、「どういう意味?」と疑問点に対し即座に質問できなかったにせよ。

話に耳を傾けている人の表情やリアクションを見ることができたら、そのトークはグッと親しみを増し、周囲の人にとって興味深いものになるに違いありません。

それこそが「聞き上手」の態度です。最初に述べたテレアポの資質として重要なものです。

自分が伝えたいこと、つまりテレアポの場合なら、売りこみたい商品や、加入して欲しいサービスのことですが、それを伝える前に、まず相手のことを知る。そのために相手の話をじっくり聞く。

相手から話を引き出すことができたら、どのような伝え方が伝わりやすいか、相手のコトバから伺い知ることもできるはず。

テレアポではなく、「興味を惹きたい相手」として置き換えてみることもできます。相手の反応もそこそこに、自分のペースで話したいことだけガンガン喋る。

それは会話ではなく、ただの独白、ひとりごとです。相手に「楽しく会話した」と思ってもらうためには、「相手にたくさん話させる」。遮ることなく、ひたすら興味深い表情で聞くのがベスト。

相手が「ああ、会話が楽しかった」と思うのは、話を一方的に聞かされているときではなく、「相手が話を興味深く聞いてくれた」ときなのです。

モテる人、というのは、たいていが「聞き上手」。つまり成績優秀なテレアポさんと一緒なんです。

モテたいと思う人、トーク技術を磨くより、まずは聞き上手になることですよ。